設計進捗

建築好きのブログです。

建築専用ソフトの比較について(2022版)-2/3

前のページに戻る

Vectorworks

Vectorworksの概要

Vectorworksは建築設計と景観設計の両方に対応した重量級3DCAD/BIMソフトです。図面の美しさには定評があります。

 

Vectorworksの優位性など

まさに「BIMソフト美しさ担当」と称するに相応しいほど、綺麗な図面を描くのに特化したソフト。BIMソフトでは珍しくMacOSにも対応している上、M1GPU*1シリーズの性能も発揮できます。

 

工業系CADというよりもAdobe illustratorのようなグラフィカルなUIと操作感で、図面の表示設定をかなり詳細に調整/編集することができます。PDFでベクターデータを扱う時も線形の描画をスッキリ表示できるので、拡大しても見ても平気な完成度の高い図面を作成できます。

 

2DCADから3DCADへの切り替えもソフト内で完結し、工業系エンジニアリングというよりは設計者寄りのツールです。

 

Vectorworksには学生単年度ライセンス、全機能が梱包されたVectorworks Design Suite、最低限の機能だけが搭載されているVectorworks Fundamentalそして建築設計、景観設計、照明設計などの各種機能によって価格と用途が分けられています。

 

景観設計分野ではGISとの連携が取れるため、幅広い表現が可能です。

 

BIM機能が備えられているソフトの中でも比較的安価なのでその点も魅力的ですね

 

Vectorworksの価格など

Vectorworksは試用期間30日が無料ですが、それ以降はライセンスを購入することで継続して利用できます。Fundamental版より上位のライセンスでは永続/年間ライセンスを選択することができるため、用途に合わせて購入を検討しましょう。

 

2022年8月時点、教育用の場合

  • Vectorworks学生単年度2022(13ヶ月22,000円)

2022年8月時点、商用の場合Vectorworks(米/日で価格設定に差があります)

  • Fundamentals 2022永続$2,045(368,500円)
  • Fundamentals 2022永続$2,045+年間保守$472(413,600円)
  • Architect/Landscape/Spotlight 2022永続$3,045(490,600円)
  • Architect/Landscape/Spotlight 2022年間$1,530(245,300円)
  • Desgin Suite 2022永続$3,733$(612,700円)
  • Desgin Suite 2022永続$3,733+1年間保守$868(655,600円)
  • Desgin Suite 2022年間$2,620(306,350円)

という価格設定になっています。

 

Vectorworksのネックなど

図面品質を高めた反面、他のCADソフトに比べハッチ機能が脆弱だったり、2DCAD⇔3DDCAD間の切り替えの不具合が目立ったり、細かい図面操作がカクつく、重いなどの状況が顕著で、Vectorworks最新版以降ではWindows 7 OSなどの旧バージョンや32bitシステムに対応していないので要注意。

 

またVectorworks専用の部材データプラットフォームがないため、素材の共有で効率化を図りたいユーザーのためにデフォルトのアセットデータ状況を改善すべきでしょう。

 

Rhinoceros

Rhinocerosの概要

建築設計従事者が選ぶ、『最も伸びしろがある建築ソフト』として定評があるCAID*2中/軽量級ソフトのRhinocerosです。

 

数年毎にメジャーバーションアップをしていて、その度にソフトの性能を飛躍的に向上しているため、ユーザーの根強い支持を得ています。

 

またCADライクな操作感やUIを濃く体現しているため、工業系ソフト愛用者の慣れ親しんだ操作感でNURBSモデリングができる唯一無二のソフトです。

 

Rhinocerosの優位性など

工業設計に適したUI設計、Rhino common言語、C♯、Pythonなどの主流プログラミング言語SDKとして利用できるほか、NURBSをはじめとする曲面モデリングの性能や精度が高いです。MacOSにも対応

 

変数設計ツールのGrasshopperを搭載しているため、施工設計や局所的な自動化に大きく貢献できますRhino.inside.Revitが登場したことにより、Revitのソフト環境でもRhinocerosの強みである、曲面設計、バッチ処理などの優位性を共有できるようになりました。

 

建築設計、都市設計、景観設計だけでなく、商業設計、工業設計、プロダクト設計などにも幅広く対応していて、公式プラットフォームサイトのFood4Rhinoに数多くの便利なプラグインや学習資料が掲載されています

 

学生版ライセンスが商業ライセンスに自動でグレードアップするのは建築ソフトでもRhinocerosのみとなっていて、学生向けの買い切り型ソフトの中でも破格に安いことで知られています。変数設計が世に広まったことで、数多くの建築家が使用するようになりました。

 

拡張子の対応が充実しているので、数百ものCAD/CAMソフトと良好な互換性を保持しています。

 

Rhinocerosの価格など

Rhinocerosメジャーバージョンライセンスの買い切り型を採用しています。Rhinocerosの体験版(公式では評価版)は90日間使用できますし、教育版のRhinocerosは商業版と変わらない機能で使用でき、商業版の約1/5の価格で購入することができます。大学で学生団体ライセンスを希望する場合、さらにライセンス料を半額にすることができます。

 

2022年8月時点では、Rhinoceros 7(米/日で価格設定に差があります)

  • 教育版永続$195(39,800円)団体申請後さらに半額
  • 商業版永続$995(158,400円)

といった価格設定になっています。

 

Rhinocerosのネックなど

マウス3ボタンの機能振り分けが一般的な3DCADとは異なる仕様で困惑することがあります。また機能が絶えず更新されていますが、UI、アイコン設計が旧時代的である、直感的ではないことから、操作面で分かりにくい部分が多々あります

 

またMacOSにソフトは対応していますが、Grasshopperと連携できるFEM構造解析KarambaがMacOSには対応していなかったりと、完全に一貫して設計解析が行えるわけではないので、全機能を滞りなく使用する場合WindowsOSに基づく必要があります

 

Rhinocerosの履歴はダイレクトモデリング式で変数化されていないので、モデリングの修正履歴を管理するのが困難です

 

Shade3D

Shade3Dの概要

国内産の歴史ある統合型3DCGソフトで、ホビー制作用途、建築パースの作成やプロダクトデザインといった用途が想定されています。UIはかなり工業系CADライクな仕上がりになっていて、モデリング自由曲面・NURBS・ポリゴンを使い分けることができます。

 

モデリングレンダリング、アニメーション、3Dプリントなどの多方面の需要を満たせる中量級ソフトです。

Shade3Dの優位性など

操作が簡単でモデリングを習得しやすい事に加え、エントリーユーザー&日本国内ユーザーが非常に多いとされるこちらのソフトですが、年間サブスクリプション型契約を採用しています。一年目のライセンス契約額(満額)ですが、2年目以降も継続する場合は半額になり、1年以上購入/利用する場合は比較的安価なソフトと言えます。

 

Macintosh出身で、WindowsOS、MacOSに両方対応しているソフトでありながら、新バージョンではBIM/CIM機能を意欲的に取り入れています。最新版ではAppleシリコンの次世代M1GPUも対応済みです。

 

日本発祥のソフトということもあり、海外発のソフトよりも言語や環境が格段に日本人に受け入れられやすいものであることが他ソフトとの優位性として挙げられます。公式サイトのチュートリアル掲示板でも情報が充実しているため、安心して学習できます。

 

他社ソフトとの高い互換性もあり、多様なCAD、CAM格式でデータのやり取りが可能で、SDKプラグインなどを導入することでさらに高度な物理演算や3Dモデリングが可能になります

 

Shade3Dの価格など

現行最新版のShade3D ver.23Shade3D ProfessionalStandardBasic、そしてProfessional版の2、3、6月間の短期レンタルライセンスが選択できます。

 

3つのグレードが存在していますが、Basic版でプラグインが動作しないことであったり、レンダリング画像最大サイズが3グレード毎に異なったり*33DS/LWOエクスポータがProfessional版限定である、などの違いがあります。

 

なお既にサブスクリプション契約をしている場合、差額無しに最新版にアップグレードできます

 

2022年8月時点商用では、Shade3D

  • Professional Ver.23一年目107,800円/二年目以降43,120円
  • Standard Ver.23一年目52,800円/二年目以降26,400円
  • Basic Ver.23一年目21,780円/二年目以降10,890円
  • Ver.23レンタル2ヶ月54,978円
  • Ver.23レンタル3ヶ月64,680円
  • Ver.23レンタル6ヶ月79,772円

といった価格設定になっています。

 

Shade3Dのネックなど

Shade3Dは30日間無料の体験版をダウンロードできますが、ソフトの機能や立ち位置としてはエントリーユーザー向けソフトであるにも関わらず、最新版では学生向けのプランがありませんし、本来安価な国産ソフトを売りにしていたのに従来の買い切り型からサブスクリプション型への移行と強気な価格の引き上げにより、手軽に使用するための3Dツールとしての役割を果たせなくなっています。

 

モデリングが行えるBIM/CIMとしての潜在力はありますが、レンダリングの品質、詳細設定もエントリーユーザー向けには申し分ない仕上がりですが、現環境のハイエンドモデルの建築ソフトと比較するとどうしても性能面で見劣りする部分があります

 

Maxon C4D

 

CINEMA 4Dの概要

スタートアップ企業CG商業第一候補ソフトのCINEMA 4D、強みは言葉いらずの直感的なUIやアイコン、シンプル且つ効率的なワークフローを実現できます。

 

Adobeの3D制作ソフトAfter EffectとC4Dの親和性が高く、平面設計、UI設計、商業広告、モーショングラフィック制作、室内設計、工業設計、動画制作などの分野で圧倒的なパフォーマンスを発揮するソフトです

 

CINEMA 4D優位性など

各3Dソフトとの互換性の高さAfter EffectやRealflowなどの外部ソフトとの連携が強く、Maya、3dsMaxと比較しても学習コストが低く、初心者でも効果的な成果を出すことができます。

 

煩雑な設定をせずともデフォルトの状態で完成形に近い成果を出せるC4Dは、文字通り機能の完成度が高い脳筋ソフトですが、古いPCでMayaではカクついて動かないようなファイルでも、C4Dのシーンならサクサク動くとの評価があります。

 

特筆すべきはレンダリングの速度でC4Dは高品質でありながらも世界最速レンダーを謳っています。レンダリングに使用するための搭載アセットも豊富で、3Dモデル、テクスチャー、照明、環境、物理演算の素材が完備されているので、仕事の効率化に役立ててくれます。ヘアーの制作機能が同系列ソフトの中で最も進んでいると定評があります。

 

近年建築設計のプレゼンに取り入れられ始め、B.I.G*4を筆頭とする有名建築事務所が徐々にC4Dによるプレゼン動画制作の需要が出てきました。

CINEMA 4Dの価格など

Maxon appをダウンロードすることで14日間Maxon社の全ての製品を試用体験できるほか、年間ライセンス、月間ライセンス、教育機関に向けたライセンス、永続ライセンスがそれぞれ選択できます。教育版では半年間ライセンスでMaxon社全ての製品が扱えるMaxon One*5を利用できます。

 

2022年8月時点、学生版の場合

  • CINEMA 4D R25を含むMaxon One6ヶ月$9.9(≒1,474円)

2022年8月時点、商用の場合CINEMA 4D(米/日で価格設定に差があります)

  • R25永続$3,495(462,000円)
  • R25年間$719(94,600円)
  • Maxon One年間$1,199(178,200円)

といった価格設定になっています。

CINEMA 4Dのネックなど

C4Dの優位をさらに活かすためのサードパーティープラグインやその使い勝手にまだ難があります。例として3dsMaxにはCS/CATプラグインがありますが、C4Dにはまだその代替として使えるものが登場していないため今後に期待ができます。

 

C4Dにはスカルプトの機能が備わっていますが、機能性の面で最新版のZbrush、またはテクスチャーをUV展開するソフトには及びません。

 

また、C4Dの優位が全て小型の工業設計、広告設計などの方面に集中しているため、大型の商業プロジェクトに必要な複雑で精度の高いモデリングを行う事に不安が残ります。現段階では3dsMax/Maya+Zbrushのワークフローが最適だとされています。

 

ArchiCAD

ArchiCADの概要

Graphisoftの主力ソフトArchiCADは世界シェアこそは少ないですが、愛用者からは最も使いやすい世界最速のBIMソフトとの評判があるソフトです。

 

1984年に登場し歴史のあるArchiCADですが、BIMの前身の「Virtual Architecture」を提唱していました。現在ではBIMの理念に迎合しOpen BIMをリードする存在です。

 

専門分野毎に規格化された部材体系と欧州、日本との相性が良いことから、欧州/日本シェアがRevitよりも多いBIMソフトで知られています。

 

ArchiCADの優位性など

ArchiCADのUI設計と各種ツールは直感的でわかりやすく、Graphisoft BIMサーバーにプロジェクトを保存することで、チーム内で3Dモデルを更新することができます。既製オブジェクトも豊富で、MacOSに対応しています

 

提案、初期設計から、施工設計までのディテール設計を除く段階で高いパフォーマンスを発揮できます

 

設計者寄りのツールであり、Revitと比較をした際、ArchiCADの図面制作におけるバッチ処理の速度は格段に速く*6占有メモリも少ないため、BIMツールとして生産性を確保できる貴重なトップダウン向けソフトとして候補にあがります。

 

IFCとの互換性が良いため、Revitともモデリングデータを問題なくやり取りできます。PCハードの要求も低く、一般的なノートPCでもArchiCADを使用できます

 

ArchiCADの価格など

最新版ArchiCADは全機能が使えるArchiCAD 25、単独ユーザー向けのライセンスArchiCAD 25 soloが選択できます。ArchiCAD 25 soloでは、ネットワークライセンスが適応されないため、注意が必要です。学生版は公式ホームページから申請すれば、単年度のArchiCAD 25ライセンスが適応されます。

 

2022年8月時点では、ArchiCAD

  • 25一年間(無料、再申請可)

2022年8月時点商用では、ArchiCAD(米/日で価格設定に差があります)

  • 25 フル永続$5,590(1,016,400円)
  • 25 solo永続$3,770(508,200円)

なお、英語圏ではサブスクリプション型がありますが、

2022年8月時点商用では、ArchiCAD 25

  • Full Version年間$2545(≒343,000円)
  • Solo Version年間$2250(≒303,230円)

といった価格設定になっています。

 

ArchiCADのネックなど

使用者の規模が限定的であることから、原生GDLによる開発があまり進んでいませんし、変数化設計ツールの機能はGrasshopperなどに比べると見劣りするかもしれないです

 

Revitと同じくインメモリーシステムを採用しているため、BIMサーバーに基づくモデリングは効率的ですが、依然大規模プロジェクトでは様々な問題に遭遇するため、真価を発揮出来ていません

 

次のページへ:価格比較表・総合評価

*1:Appleシリコンの次世代チップ

*2:Computational Aided Industrial Design

*3:Basicは2500 x 2500、Standardは4500 x 4500、Professionalは22528 x 22528

*4:ビャルケ・インゲルス・グループ

*5:C4D、Red Gaint、Redshift、ZBrush 2022、Universe、Forger計6製品

*6:ArchiCADの処理速度はRevitよりも45%速い※Graphisoft社調べ