設計進捗

建築好きのブログです。

建築専用ソフトの比較(2022版)

概要

  • 建築専用ソフトの比較

  1. Trimble SketchUp
  2. Autodesk(Autodesk/Revit/3dsMax/Maya)
  3. Blender
  4. Vectorworks
  5. Rhinoceros
  6. Shade3D
  7. Maxon C4D
  8. ArchiCAD
  • 価格比較とまとめ

  1. 価格比較
  2. MacOS対応ソフト一覧
  3. 総合評価
  • 価格比較表のみを見たい方へ

asahi-k.hatenablog.com

建築専用ソフトの比較

導入など

こちらに関してはひそかに長年に思っていたテーマなのですが、

 

『ひょっとすると建築専用ソフトには既に最適解が出ているのではないか?』

 

という疑問に対してのアンサー記事です。

 

まずは過去に話題になったツイート内容の抜粋から

 

 

 

 

というものなのですが、円グラフに変換しますと…



といった構成になります。

 

Twitterの反応など

実際こちらの円グラフ、どんな性質の比較なのか、真偽はどうなっているのか判断ができない方が多いと思うので説明しますが、「建築専用ソフト」と称しても建築設計・構造設計・設備設計の全てを包括しつつも特化している「The・唯一の建築ソフト!」のようなモノは現状市場には存在していません。

 

ですから、建築従事者は「それぞれ用途に合わせてソフトの特定の機能を使用し、多機能ソフト同士を連携して設計成果を出す」というのが実情でしょう。

 

そして専門性のある高機能ソフトであれば、おのずと建築用途のアクティブユーザー数が少なくなるため、3Dモデリングができて、2DCAD図面にデータを変換できる、レンダリングができるという条件の下でユーザー母数が大きいソフトを選出しています

 

データのソースは、各ソフト社のホームページ掲示板に記載されたものや、デジタルフォーラムの動画などを参照しています。

 

そして皆さんの反応で特に目立ったのが、

  • SketchUpのアクティブユーザー数が最多
  • blenderのアクティブユーザー数がAutodesk連合に次ぐ位置

という部分でした。

 

Trimble SketchUp

SketchUpの概要

ユーザー数最多のTrimble SketchUpは、現在全世界4000万人以上のライセンス登録者数、そして建設プロジェクトで累計10億件を超える実績があり、まさに有望建築ソフトの一つとも言えます。

 

ソフトの操作やUIがシンプルで、PCのOS*1WindowsMacOSに対応していて、iPadタブレットや携帯端末にも対応しています。

 

SketchUpの優位性など

建築、都市、景観、室内の設計などの分野に対応できる万能型軽量級ソフトで、手描きスケッチのように3Dモデルを直感的に操作できることに定評がありますし、

 

 

などのユーザーが多いライセンスに加え、その他プロライセンスと変わらない機能で割引して使える教育ライセンスのSketchUp Studio for University、Microsoftアカウントで無料で使えるSketchUp for school、ポイントクラウドを扱えるSketchUp Studioなどそのライセンスサービスの多様さと価格の安さが人気の秘訣でしょう。

 

加えてSketchUpはモデルのデータ軽量化という点においては3DCADでは優れています

SketchUpの価格など

SketchUp Free/Make 2017は無料ですが、商用であればSketchUp Go/Pro/Studioライセンス以上の権限が必要です。

 

2022年8月時点では、

  • Go版年間$119(≒16,000円)
  • Pro版年間$299(≒40,000円)
  • Studio版年間$699(≒93,000円)
  • 学生版/教育機関年間$55(≒7,500円)

という価格設定になっています。

 

SketchUpのネックなど

SketchUp自体は初心者でも1年から2年ほどで操作をマスターできるぐらい基本操作は簡単ですが、その反面デメリットもはっきりしていて、高度なモデリングをする際には補助系のプラグインや他社ソフトとの連携に依存する部分が大きくなります

 

そして有料プラグインなどもサブスクリプション型を採用していることが多いため、実際のソフト購入の支出よりも多く支払うケースがあります。

 

またSketchUpはTeklaなどの構造系ソフトとも連携することができますが、そういった構造/設備のソフトはMacOSにサポートしていないことから、事実上WindowsOSが搭載されたPCでないと建築のワークフローとして一貫できないことが挙げられます。

 

Ruby言語を基盤とした原生プラグインは完成度が高い機能のものが多い反面、更新頻度が低く、多機能変数設計ツールがないことや曲面設計に対しては精度が低いなどの明らかな欠点があります。

 

Autodesk連合

Autodeskソフトの概要

Autodeskは建築工業ソフトウェアの大手社で、

などの高性能重量級ソフトを抱えています

 

ツイートから抜粋した内容では、3dsMaxとMayaが合わせて120万人のユーザー数があり、Revitが50万人いるとのことでしたが、推定値ということでグラフではAutodesk系列のソフトをまとめて取り上げました(1800万ユーザー数はAutodesk決算書より)。

 

Autodeskソフトの優位性など

AutoCADはAutodesk社の主力ソフトで2DCADの分野では全世界で広いシェアがあります。Autodesk社の真価は、AutoCADソフトを中心としたサードパーティーソフトの充実からくるもので、上記Revit、3dsMax、Mayaらは元は他社ソフトから買収したもので、業種毎にサードパーティーの機能を強化しつつも、多様な自社ソフト間での良好な互換性を持つことで一貫したワークフローを実現しています

 

またライセンス形態の変更頻度もかなり多く、AutoCAD LTといった安価版のライセンスと全機能を備えたAutoCAD完全版の販売を一変して、AutoCAD LTの価格で全機能を使用できるライセンスAutoCAD無印*2を打ち出すなど、市場のニーズに敏感なソフト社です。

 

3dsMaxは主にアニメーション用途で用いられますが、特に建築室内設計とパース制作での優位性が強く、照明、レンダリング、マテリアル、高品質モデルアセットや専用のプラグインが豊富で成熟したワークフローが出来上がっているため、3dsMaxのパースの外注を頼みやすく、品質も安定しています

 

Mayaはアニメーションや動画制作の為に用いられるハイエンドソフトですが、高機能3Dモデリング、モーション制作機能を搭載していて、3dsMax/Maya+ZBrushを組み合わせることでAAA制作の映画プロジェクトやゲーム開発などの領域で、非常に高度で高品質なプロダクトを制作することができるCGソフトです。建築設計でもNURBS*3を扱える貴重な非線形ソフトとして、建築のコンセプト設計や限定的な曲面設計初期段階に用いられます

 

Revitリバースエンジニアリング向けのBIM(ビルディングインフォメーションモデル)ソフトとして、建築設計から設備設計、施工管理、後期運用までの建築物全周期設計を視野に入れたデータベース建築ソフトです。モデリングオブジェクト自体に属性を記入することで予算/部材管理や土木積算、面積、階高、設備エンジニアリングを効率化し、Navisworksと連携することで衝突回避検査をするなど多機能な連携が最大の強みです

 

Autodeskソフトの価格など

Autodeskの製品は学生/教育機関向けには無料ライセンスを提供していて、1年毎に再契約する必要はありますが、学生期間で高機能ソフトをほぼ全て無料で使える点は魅力的です

2022年8月時点、商用の場合(米/日で価格設定に差があります)

  • AutoCAD(米LT、日本無印)年間$460(71,500円)
  • AutoCAD Plus版*4年間$1,865(231,000円)
  • 3dsMax年間$1,785(286,000円)
  • Maya LT年間$290(42,900円)
  • Maya年間$1,785(286,000円)
  • Revit LT年間$495$(85,800円)
  • Revit年間$2,675(427,900円)

という価格設定になっています。

 

Autodeskソフトのネックなど

まずAutodesk製品はAutoCADを除くとMacOSに対応していないため、WindowsOSを搭載したPCでソフトを使用するのが前提になります

 

建築業界使用率の高いAutoCADですが、互換性の高いソフトのBricsCAD、ARES、IJCADや国内用途に特化されたDRA-CADソフトなどが日本のシェアを伸ばしてきたこともあり、AutoCADも費用対効果を重視したライセンスを売り出すなど、絶対的なシェアを誇るAutodeskとしては徐々に余裕がなくなる商業展開となっています

 

3dsMaxは依然として建築パース外注の第一候補ソフト(または他ソフトデータを外注先に送り、3dsMax内でCGを作り直してもらう)ですが、前時代的で難解なUIが学習コストを無駄に釣り上げている点MayaのNURBSを扱う機能は同じくNURBSを扱える人気ソフトRhinocerosが台頭してきたことにより、学習コストなどの面から建築用途の利用は減っています

 

RevitはBIMツールとして多方面ソフトとの連携範囲が非常に広いものの、トラブルシュートツールとしての効率は低いです。例えば、3Dモデリングに情報を付与し、部材使用量集計、階高調整、MEPモデリング調整などの局所的に効率化された利点があっても、FEMは非対応で、積算アセンブリはありませんし、モデリング、図面作成やレンダリングプロセスが煩雑で、Revitなら図面修正にかける時間が2DCADなら1/10で事足りる…なんて状況に遭遇しがちです。

 

またAutodeskソフトの基本容量が10GB以上と大きく、携帯などの簡易端末で3Dモデルを気軽に確認できない点が、施工現場が遅々としてRevit内のモデルを参照して効率化できない理由だと言えます。

 

Blender

blenderの概要

2019年のblender Ver.2.9アップグレードを機に、3DCG界隈を激震させたフリーソフト。そして公式サイトのダウンロード数が1300万回を超え、全世界に推定550万人のアクティブユーザーがいるとされるダークホース

 

blenderオープンソースを基調とした軽量級3D動画制作ソフトです。

などの幅広い制作機能を兼ね備え、尚且つ驚く程の速度で成長をし続けているソフトです。

 

主流のWindowsOSだけでなく、LinuxMacOSなどでも使用可能OpenGLを採用しています。

 

blenderの優位性など

ツイッターで常に#b3dのハッシュタグと共に凄いクオリティのインディーズ作品が流れてくる、今最も勢いがある3DCGソフト

 

blenderの一番の優位性として挙げられるのが、オープンソース且つ無料な点です。

 

高い自由度でUIを編集できるため、ソフトのレイアウトを自分仕様にカスタムできますし、複数のディスプレイにも対応しています。

 

外部の補助ソフト無しにCycles Render/Eveee Renderで高品質レンダリングを行うことが可能で、CG制作を高速化できます

 

またblenderのシェーダーノードを編集する事で局所的に3Dモデルを変数化することができます

 

アドオンの数、YouTube上のチュートリアル動画が非常に豊富なので多様なリソースを利用する事ができます。

 

blenderの値段など

現在blenderダウンロード無料です。ですが、同時にblender基金にいくらでも寄付することができます

 

無論blenderは寄付によってマネタイズしているわけではないと思いますが、例え1円でも、100円でも、10,000円でも、皆さんの寄付がblenderを開発する団体の励みになります。

 

そしてblenderに欠かせないアドオン*5ですが、こちらも殆どが数千円から一万円以下の価格で購入できるので、ツールコストは低く抑えられます

 

blenderのネックなど

建築ソフトを購入する場合、学習コストのハードルがあるため指定された地域のカスタマーサービスにソフト操作の問い合わせをすることができますが、blenderにアフターサービスはないため『こういうことがやりたい』といった問題は基本掲示板フォーラムで情報共有するか、自分自身で解決するしかありません

 

建築の実務でblenderを導入すると、拡張子の関係で成熟したワークフローを持つソフトに外注をするのが困難だったり、互換性という点において不利な面が目立ちます

 

素晴らしいツールのblenderですが、ソフトの機能や操作性がアニメーション寄りで建築、工業設計には適していない部分がまだまだ多いです。

 

現状CADライクの操作ではないこと(または変更する手段が乏しい部分)がblenderの不足点と言えます。精密性を重視する建築ソフトの仕様上、「編集ツール+直接数値入力して操作を反映」するのが好ましいため、端数が生まれないような正確なモデリングを必要以上に心がける必要があります。コマンドライン命名法やホットキーの振り分けに法則性が薄く、傍目から見て雑で記憶し難い点も気になります

 

建築系、構造系ソフトとの連携が薄い点も減点項目でしょう。

 

2DCADのような図面注釈やバッチ処理を行う為の選択肢が少ない上に高度な図面用設定は皆無なため、『他の建築ソフトではできたのに…』といった一手間が増えることもしばしばです。これからに期待、といったところでしょうか…

 

次のページへ:Vectorworksの概要

Vectorworks

Vectorworksの概要

Vectorworksは建築設計と景観設計の両方に対応した重量級3DCAD/BIMソフトです。図面の美しさには定評があります。

 

Vectorworksの優位性など

まさに「BIMソフト美しさ担当」と称するに相応しいほど、綺麗な図面を描くのに特化したソフト。BIMソフトでは珍しくMacOSにも対応している上、M1GPU*6シリーズの性能も発揮できます。

 

工業系CADというよりもAdobe illustratorのようなグラフィカルなUIと操作感で、図面の表示設定をかなり詳細に調整/編集することができます。PDFでベクターデータを扱う時も線形の描画をスッキリ表示できるので、拡大しても見ても平気な完成度の高い図面を作成できます。

 

2DCADから3DCADへの切り替えもソフト内で完結し、工業系エンジニアリングというよりは設計者寄りのツールです。

 

Vectorworksには学生単年度ライセンス、全機能が梱包されたVectorworks Design Suite、最低限の機能だけが搭載されているVectorworks Fundamentalそして建築設計、景観設計、照明設計などの各種機能によって価格と用途が分けられています。

 

景観設計分野ではGISとの連携が取れるため、幅広い表現が可能です。

 

BIM機能が備えられているソフトの中でも比較的安価なのでその点も魅力的ですね

 

Vectorworksの価格など

Vectorworksは試用期間30日が無料ですが、それ以降はライセンスを購入することで継続して利用できます。Fundamental版より上位のライセンスでは永続/年間ライセンスを選択することができるため、用途に合わせて購入を検討しましょう。

 

2022年8月時点、教育用の場合

  • Vectorworks学生単年度2022(13ヶ月22,000円)

2022年8月時点、商用の場合Vectorworks(米/日で価格設定に差があります)

  • Fundamentals 2022永続$2,045(368,500円)
  • Fundamentals 2022永続$2,045+年間保守$472(413,600円)
  • Architect/Landscape/Spotlight 2022永続$3,045(490,600円)
  • Architect/Landscape/Spotlight 2022年間$1,530(245,300円)
  • Desgin Suite 2022永続$3,733$(612,700円)
  • Desgin Suite 2022永続$3,733+1年間保守$868(655,600円)
  • Desgin Suite 2022年間$2,620(306,350円)

という価格設定になっています。

 

Vectorworksのネックなど

図面品質を高めた反面、他のCADソフトに比べハッチ機能が脆弱だったり、2DCAD⇔3DDCAD間の切り替えの不具合が目立ったり、細かい図面操作がカクつく、重いなどの状況が顕著で、Vectorworks最新版以降ではWindows 7 OSなどの旧バージョンや32bitシステムに対応していないので要注意。

 

またVectorworks専用の部材データプラットフォームがないため、素材の共有で効率化を図りたいユーザーのためにデフォルトのアセットデータ状況を改善すべきでしょう。

 

Rhinoceros

Rhinocerosの概要

建築設計従事者が選ぶ、『最も伸びしろがある建築ソフト』として定評があるCAID*7中/軽量級ソフトのRhinocerosです。

 

数年毎にメジャーバーションアップをしていて、その度にソフトの性能を飛躍的に向上しているため、ユーザーの根強い支持を得ています。

 

またCADライクな操作感やUIを濃く体現しているため、工業系ソフト愛用者の慣れ親しんだ操作感でNURBSモデリングができる唯一無二のソフトです。

 

Rhinocerosの優位性など

工業設計に適したUI設計、Rhino common言語、C♯、Pythonなどの主流プログラミング言語SDKとして利用できるほか、NURBSをはじめとする曲面モデリングの性能や精度が高いです。MacOSにも対応

 

変数設計ツールのGrasshopperを搭載しているため、施工設計や局所的な自動化に大きく貢献できますRhino.inside.Revitが登場したことにより、Revitのソフト環境でもRhinocerosの強みである、曲面設計、バッチ処理などの優位性を共有できるようになりました。

 

建築設計、都市設計、景観設計だけでなく、商業設計、工業設計、プロダクト設計などにも幅広く対応していて、公式プラットフォームサイトのFood4Rhinoに数多くの便利なプラグインや学習資料が掲載されています

 

学生版ライセンスが商業ライセンスに自動でグレードアップするのは建築ソフトでもRhinocerosのみとなっていて、学生向けの買い切り型ソフトの中でも破格に安いことで知られています。変数設計が世に広まったことで、数多くの建築家が使用するようになりました。

 

拡張子の対応が充実しているので、数百ものCAD/CAMソフトと良好な互換性を保持しています。

 

Rhinocerosの価格など

Rhinocerosメジャーバージョンライセンスの買い切り型を採用しています。教育版のRhinocerosは商業版と変わらない機能で使用でき、商業版の約1/5の価格で購入することができます。大学で学生団体ライセンスを希望する場合、さらにライセンス料を半額にすることができます。

 

2022年8月時点では、Rhinoceros 7(米/日で価格設定に差があります)

  • 教育版永続$195(39,800円)団体申請後さらに半額
  • 商業版永続$995(158,400円)

といった価格設定になっています。

 

Rhinocerosのネックなど

マウス3ボタンの機能振り分けが一般的な3DCADとは異なる仕様で困惑することがあります。また機能が絶えず更新されていますが、UI、アイコン設計が旧時代的である、直感的ではないことから、操作面で分かりにくい部分が多々あります

 

またMacOSにソフトは対応していますが、Grasshopperと連携できるFEM構造解析KarambaがMacOSには対応していなかったりと、完全に一貫して設計解析が行えるわけではないので、全機能を滞りなく使用する場合WindowsOSに基づく必要があります

 

Rhinocerosの履歴はダイレクトモデリング式で変数化されていないので、モデリングの修正履歴を管理するのが困難です

 

Shade3D

Shade3Dの概要

国内産の歴史ある統合型3DCGソフトで、ホビー制作用途、建築パースの作成やプロダクトデザインといった用途が想定されています。UIはかなり工業系CADライクな仕上がりになっていて、モデリング自由曲面・NURBS・ポリゴンを使い分けることができます。

 

モデリングレンダリング、アニメーション、3Dプリントなどの多方面の需要を満たせる中量級ソフトです。

Shade3Dの優位性など

操作が簡単でモデリングを習得しやすい事に加え、エントリーユーザー&日本国内ユーザーが非常に多いとされるこちらのソフトですが、年間サブスクリプション型契約を採用しています。一年目のライセンス契約額(満額)ですが、2年目以降も継続する場合は半額になり、1年以上購入/利用する場合は比較的安価なソフトと言えます。

 

Macintosh出身で、WindowsOS、MacOSに両方対応しているソフトでありながら、新バージョンではBIM/CIM機能を意欲的に取り入れています。最新版ではAppleシリコンの次世代M1GPUも対応済みです。

 

日本発祥のソフトということもあり、海外発のソフトよりも言語や環境が格段に日本人に受け入れられやすいものであることが他ソフトとの優位性として挙げられます。公式サイトのチュートリアル掲示板でも情報が充実しているため、安心して学習できます。

 

他社ソフトとの高い互換性もあり、多様なCAD、CAM格式でデータのやり取りが可能で、SDKプラグインなどを導入することでさらに高度な物理演算や3Dモデリングが可能になります

 

Shade3Dの価格など

現行最新版のShade3D ver.23Shade3D ProfessionalStandardBasic、そしてProfessional版の2、3、6月間の短期レンタルライセンスが選択できます。

 

3つのグレードが存在していますが、Basic版でプラグインが動作しないことであったり、レンダリング画像最大サイズが3グレード毎に異なったり*83DS/LWOエクスポータがProfessional版限定である、などの違いがあります。

 

なお既にサブスクリプション契約をしている場合、差額無しに最新版にアップグレードできます

 

2022年8月時点商用では、Shade3D

  • Professional Ver.23一年目107,800円/二年目以降43,120円
  • Standard Ver.23一年目52,800円/二年目以降26,400円
  • Basic Ver.23一年目21,780円/二年目以降10,890円
  • Ver.23レンタル2ヶ月54,978円
  • Ver.23レンタル3ヶ月64,680円
  • Ver.23レンタル6ヶ月79,772円

といった価格設定になっています。

 

Shade3Dのネックなど

Shade3Dは30日間無料の体験版をダウンロードできますが、ソフトの機能や立ち位置としてはエントリーユーザー向けソフトであるにも関わらず、最新版では学生向けのプランがありませんし、本来安価な国産ソフトを売りにしていたのに従来の買い切り型からサブスクリプション型への移行と強気な価格の引き上げにより、手軽に使用するための3Dツールとしての役割を果たせなくなっています。

 

モデリングが行えるBIM/CIMとしての潜在力はありますが、レンダリングの品質、詳細設定もエントリーユーザー向けには申し分ない仕上がりですが、現環境のハイエンドモデルの建築ソフトと比較するとどうしても性能面で見劣りする部分があります

 

Maxon C4D

 

CINEMA 4Dの概要

スタートアップ企業CG商業第一候補ソフトのCINEMA 4D、強みは言葉いらずの直感的なUIやアイコン、シンプル且つ効率的なワークフローを実現できます。

 

Adobeの3D制作ソフトAfter EffectとC4Dの親和性が高く、平面設計、UI設計、商業広告、モーショングラフィック制作、室内設計、工業設計、動画制作などの分野で圧倒的なパフォーマンスを発揮するソフトです

 

CINEMA 4D優位性など

各3Dソフトとの互換性の高さAfter EffectやRealflowなどの外部ソフトとの連携が強く、Maya、3dsMaxと比較しても学習コストが低く、初心者でも効果的な成果を出すことができます。

 

煩雑な設定をせずともデフォルトの状態で完成形に近い成果を出せるC4Dは、文字通り機能の完成度が高い脳筋ソフトですが、古いPCでMayaではカクついて動かないようなファイルでも、C4Dのシーンならサクサク動くとの評価があります。

 

特筆すべきはレンダリングの速度でC4Dは高品質でありながらも世界最速レンダーを謳っています。レンダリングに使用するための搭載アセットも豊富で、3Dモデル、テクスチャー、照明、環境、物理演算の素材が完備されているので、仕事の効率化に役立ててくれます。ヘアーの制作機能が同系列ソフトの中で最も進んでいると定評があります。

 

近年建築設計のプレゼンに取り入れられ始め、B.I.G*9を筆頭とする有名建築事務所が徐々にC4Dによるプレゼン動画制作の需要が出てきました。

CINEMA 4Dの価格など

Maxon appをダウンロードすることで14日間Maxon社の全ての製品を試用体験できるほか、年間ライセンス、月間ライセンス、教育機関に向けたライセンス、永続ライセンスがそれぞれ選択できます。教育版では半年間ライセンスでMaxon社全ての製品が扱えるMaxon One*10を利用できます。

 

2022年8月時点、学生版の場合

  • CINEMA 4D R25を含むMaxon One6ヶ月$9.9(≒1,474円)

2022年8月時点、商用の場合CINEMA 4D(米/日で価格設定に差があります)

  • R25永続$3,495(462,000円)
  • R25年間$719(94,600円)
  • Maxon One年間$1,199(178,200円)

といった価格設定になっています。

CINEMA 4Dのネックなど

C4Dの優位をさらに活かすためのサードパーティープラグインやその使い勝手にまだ難があります。例として3dsMaxにはCS/CATプラグインがありますが、C4Dにはまだその代替として使えるものが登場していないため今後に期待ができます。

 

C4Dにはスカルプトの機能が備わっていますが、機能性の面で最新版のZbrush、またはテクスチャーをUV展開するソフトには及びません。

 

また、C4Dの優位が全て小型の工業設計、広告設計などの方面に集中しているため、大型の商業プロジェクトに必要な複雑で精度の高いモデリングを行う事に不安が残ります。現段階では3dsMax/Maya+Zbrushのワークフローが最適だとされています。

 

ArchiCAD

ArchiCADの概要

Graphisoftの主力ソフトArchiCADは世界シェアこそは少ないですが、愛用者からは最も使いやすい世界最速のBIMソフトとの評判があるソフトです。

 

1984年に登場し歴史のあるArchiCADですが、BIMの前身の「Virtual Architecture」を提唱していました。現在ではBIMの理念に迎合しOpen BIMをリードする存在です。

 

専門分野毎に規格化された部材体系と欧州、日本との相性が良いことから、欧州/日本シェアがRevitよりも多いBIMソフトで知られています。

 

ArchiCADの優位性など

ArchiCADのUI設計と各種ツールは直感的でわかりやすく、Graphisoft BIMサーバーにプロジェクトを保存することで、チーム内で3Dモデルを更新することができます。既製オブジェクトも豊富で、MacOSに対応しています

 

提案、初期設計から、施工設計までのディテール設計を除く段階で高いパフォーマンスを発揮できます

 

設計者寄りのツールであり、Revitと比較をした際、ArchiCADの図面制作におけるバッチ処理の速度は格段に速く*11占有メモリも少ないため、BIMツールとして生産性を確保できる貴重なトップダウン向けソフトとして候補にあがります。

 

IFCとの互換性が良いため、Revitともモデリングデータを問題なくやり取りできます。PCハードの要求も低く、一般的なノートPCでもArchiCADを使用できます

 

ArchiCADの価格など

最新版ArchiCADは全機能が使えるArchiCAD 25、単独ユーザー向けのライセンスArchiCAD 25 soloが選択できます。ArchiCAD 25 soloでは、ネットワークライセンスが適応されないため、注意が必要です。学生版は公式ホームページから申請すれば、単年度のArchiCAD 25ライセンスが適応されます。

 

2022年8月時点では、ArchiCAD

  • 25一年間(無料、再申請可)

2022年8月時点商用では、ArchiCAD(米/日で価格設定に差があります)

  • 25 フル永続$5,590(1,016,400円)
  • 25 solo永続$3,770(508,200円)

なお、英語圏ではサブスクリプション型がありますが、

2022年8月時点商用では、ArchiCAD 25

  • Full Version年間$2545(≒343,000円)
  • Solo Version年間$2250(≒303,230円)

といった価格設定になっています。

 

ArchiCADのネックなど

使用者の規模が限定的であることから、原生GDLによる開発があまり進んでいませんし、変数化設計ツールの機能はGrasshopperなどに比べると見劣りするかもしれないです

 

Revitと同じくインメモリーシステムを採用しているため、BIMサーバーに基づくモデリングは効率的ですが、依然大規模プロジェクトでは様々な問題に遭遇するため、真価を発揮出来ていません

 

価格比較とまとめ

価格比較

こちらをまず見てください↓

記事で取り上げたソフトにかかる累積費用をグラフしてまとめてみましたが、

  • 長期ではblenderRhinoceros 7がやはり費用面で郡を抜けて優秀であること
  • 10年の期間内ではAutoCAD Plus、Revit、3dsMax、Mayaを除くソフトの費用はほぼ100万円以下に収まること
  • ハイエンドソフトの更新周期が短い場合、買い切り型によるメリットは少ない

などの点が顕著ですね。

 

そして建築設計においてRhinocerosだけを使う、blenderだけを使うというケースも非常に稀ですので、実際はそれぞれソフトを組み合わせて使用する際の収支計画も綿密に検討する必要があります

 

また今回の記事では取り上げませんでしたが、SiemensのUGS NXやDassaultのCATIA、Bentley系列ソフトなど、ハイエンドBIM/CAD/CAMソフトをダウングレードし低価格で提供することを模索し建築市場のニーズに合わせたものが現環境の建築ソフトですので、高品質且つ安価なプランを提供するソフトのニーズ/シェアは将来的に増え続けると思います。

 

MacOS対応済み建築ソフト一覧

2022年8月時点、MacOSAppleシリコンGPUに対応しているソフトは、

現時点『AutoCADRhinocerosに対してAppleシリコンがもたらす性能向上は軽微であるため、あまりオススメしない』との意見がありました。

 

確認したところ、RhinocerosでM1GPUを使用する際はRosetta*12によってバイナリ互換をしているため、最大性能を発揮できる訳ではないとのことです。

 

2022年8月時点で対応していないソフトは

  • 3dsMax
  • Maya
  • Revit
  • Revit LT

上記の通りになります。

 

総合評価

オススメしたいソフト

個人の独断と偏見による評価なのですが…、

建築専用ソフトとして皆さんにオススメしたいソフトは

  • Rhinoceros 7
  • Vectorworks 2022永続ライセンス/サブスク*13

上記の2ソフトです!高評価の理由としては、

  • Rhinoceros費用対効果が抜群に優れている
  • Rhinocerosサードパーティーツールがとても強力である
  • MacOSで動作するBIM役割ソフトとしてのVectorworks
  • Vectorworksが設計者寄りソフトで作図機能が優れている

などが挙げられます。

 

次点にオススメしたいソフトとしては

の2ソフトが堅いと思います。理由としては

  • blender無料ソフトであり、プラグインの相場も安価である
  • blenderはまだ発展途上でCADソフトとしての機能向上が期待できる
  • SketchUp簡単な操作性強力なプレゼンツールであることが評価できる
  • SketchUp for iPadのような携帯性が高い設計ツールが評価できる

などが挙げられます。

感想など

いや~グラフにして比較したりソフトの価格を調べたり、結構大変だったのですが比較してようやく『あ!このソフトって実は凄いなぁ~!』みたいな発見があったので、記事にまとめることができて良かったです。

 

価格や欠点を度外視するのであれば、

  • ArchiCAD
  • C4D

のような良好な操作性と作業効率の高さを兼ねるこれらソフトを是非推したいですね。

 

性能は悪くない、ただ痒いところに手が届くサードパーティープラグイン/ソフトが足りていないだけ…ユーザーがあと5倍くらい増えてくれれば…といったところです。

 

また、AutodeskソフトではRevit LT/無印、AutoCAD 無印/Plusがかなり評価されていますが、上位版の価格が高すぎるといった印象です。

 

Revitの年度ライセンスだと3年継続時に買い切り型のArchiCADを超えますが、両者BIMソフトの代表として費用面では拮抗*14しているような気がしますし、廉価版のRevit LTについてはDynamoやMEPなどの欠落部分がかなり痛いので、実質選択肢から除外…という感じですかね

 

いずれにせよ、BIMソフトは軽量化を進めて、施工現場でも随時フィードバックができるような機能があればネックは解決されると思います

 

以上が2022年建築専用ソフトの比較について、でした!

*1:オペレーションシステム

*2:上位版ライセンスはAutoCAD Plus

*3:非一様有理Bスプライン

*4:Mechanical、Architecture、Electrical、Map 3D、MEP、Plant 3D、Raster Designの7業種ツールセットを含む

*5:プラグインに同じ、個人開発者による補助ツール

*6:Appleシリコンの次世代チップ

*7:Computational Aided Industrial Design

*8:Basicは2500 x 2500、Standardは4500 x 4500、Professionalは22528 x 22528

*9:ビャルケ・インゲルス・グループ

*10:C4D、Red Gaint、Redshift、ZBrush 2022、Universe、Forger計6製品

*11:ArchiCADの処理速度はRevitよりも45%速い※Graphisoft社調べ

*12:Rosetta - Wikipedia

*13:オススメしたいのはVectorworks ArchitectかDesign Suite

*14:実際にはArchiCADも機能が更新されれば最新版を買いなおすことがあるため